【中小企業向けコラム】DX化を進めるうえでの注意点

こんにちは。補助金コンサルタントの渡辺です。
今回は、DX化を進める際にあらかじめ考慮しておきたいポイントについてお伝えしたいと思います。
近年、企業がDX化に取り組むメリットは非常に大きく、コスト削減、処理スピードの向上、正確性の向上など、さまざまな効果が期待できます。もちろん、その成果は顧客からの評価向上や、さらなる収益改善にもつながります。
しかし、DX化にはメリットだけでなく、導入の過程で注意すべき点や、思わぬデメリットが生じるケースも少なくありません。
ここでは、私が実際に携わったDX化プロジェクトの事例をもとに、ご説明します。
■ 現場で行われていた「属人的な補正作業」の発覚
DX化を検討していた企業の部署Xでは、クライアントから受け取った実験データを分析し、結果を提供するサービスを行っていました。プロジェクトでは、この実験データの一次分析工程をプログラムで自動化する方針が立てられました。
導入によって人員削減や分析スピードの大幅向上が期待されていましたが、現場担当者へのヒアリングを進める中で、予想外の事実が浮かび上がりました。
クライアントから提供されるデータには、誤りや不備が含まれることがあり、現場担当者はこれらを「経験則」に基づいて補正しながら業務を進めていたのです。
この補正作業は、クライアント側・実施側の上層部も把握しておらず、現場だけで共有されている“属人的な作業”でした。
さらに、この補正作業は担当者の経験に依存しており、DX化に必要なロジックとして明確化することが難しく、自動化の大きな障壁となっていました。
もしそのまま自動化を行えば、分析結果にブレが生じる恐れがあり、クライアント企業にも実施側にもリスクが生じてしまいます。
■ それでもDX化を見送らなかった理由
では、このようなデメリットが見つかった場合、DX化は見送るべきなのでしょうか。
この事例では、クライアントと実施側のマネジメント層が何度も協議を行い、
- 「エラーデータは可能な限りクライアント側で担保する」
- 「それでも発生しうる結果のブレは、リスクとして双方で受け入れる」
という結論に至り、最終的にDX化を進める判断が下されました。
実際には、書ききれないほど多くの議論があり、事業への影響、コスト、品質、責任範囲など、多角的な視点から慎重に検討されたうえでの決断でした。
■ デメリットの判断こそマネジメント層の役割
この事例からお伝えしたいポイントは、
DX化のメリット・デメリットを整理し、最終判断を行うのは、必ずマネジメント層であるべき
ということです。
特にデメリットに関しては、「どちらが負担を持つのか」「どの範囲ならリスクとして許容できるのか」といった判断が求められ、現場レベルでは決められないものが多く存在します。
DX化は単なるツールの導入ではなく、業務プロセスそのものの再構築です。
だからこそ、現場の実態を正確に把握しつつ、最終判断はマネジメント層が責任を持って行うことが重要になります。
**【次回予告】
次回のコラムでは、DX化による業務自動化が“働き方”や“社員の役割”にどのような影響を与えるのかについてお話しします。

