行政書士が解説する法人設立ガイド 株式会社・合同会社・一般社団法人 全11回シリーズ 第1回 共通手続き(1/2) 法人設立の第一歩ー法人形態の選び方と設立までの全体像
起業を志すとき、最初に決めなければならないのが「どのような法人形態で事業を始めるか」という点です。日本でよく用いられる法人形態には、株式会社、合同会社、一般社団法人などがあり、それぞれ設立の手続きや税務上の扱い、対外的な信用力、意思決定の仕組みなどが異なります。本シリーズでは、これから起業される方や個人事業主として活動されている方に向けて、これら三つの法人形態を中心に、設立の手続きと注意点を全11回にわたって解説してまいります。
まず株式会社は、出資者である株主と経営を担う取締役が制度上分離していることが特徴です。株式を発行して広く資金を集めることができ、対外的な信用力が高いとされる一方、設立コストや運営上の手続きが他の形態に比べて重くなる傾向があります。次に合同会社は、出資者自身が経営を行う「所有と経営の一致」を特徴とする形態で、株式会社に比べて設立費用を抑えられ、意思決定も比較的柔軟に行える点がメリットです。ただし対外的な認知度や信用力の面では株式会社に一歩譲るとされることがあります。そして一般社団法人は、営利を目的としない事業を行う団体に適した法人形態であり、業界団体や町内会的な活動、公益的な事業など、利益の分配を予定しない活動に向いています。
法人設立の一般的な流れは、おおむね次のようになります。第一に、事業の内容や目的、資金計画を検討し、どの法人形態が適しているかを判断します。第二に、法人の名称(商号・名称)、所在地、事業目的、機関設計などを決定し、定款を作成します。第三に、株式会社と一般社団法人の場合は公証人による定款認証の手続きを経ます(合同会社は定款認証が不要です)。第四に、資本金・基金等の払込みを行います。第五に、法務局へ設立登記を申請します。そして最後に、税務署や都道府県・市区町村、年金事務所などへの各種届出を行い、事業を開始します。個人事業主として既に事業を営んでいる方が法人化する場合には、これらの手続きに加えて、屋号から法人名への契約名義の変更や、取引先への通知、事業用資産の引継ぎなども検討事項に加わります。
法人形態の選択は、一度決めたら簡単にやり直せるものではありません。株式会社から合同会社へ、あるいはその逆へ組織変更することは制度上可能ですが、別途の手続きと費用を要します。そのため、事業の将来像(資金調達の方法、事業承継の見通し、取引先との関係など)をできるだけ具体的に描いたうえで、法人形態を選ぶことが望ましいといえます。
これらの手続きのうち、定款の作成や許認可申請の準備などは行政書士が業務として取り扱うことができますが、設立登記の申請そのものは司法書士の専管業務であり、行政書士が代理人として登記申請を行うことはできません。また、株式会社・一般社団法人の定款認証は公証人が行う手続きであり、行政書士はその準備や代理を支援する立場にとどまります。本シリーズでは、こうした専門家の役割分担についても随時注記しながら、実務上どのような準備が必要になるかを具体的に解説してまいります。次回は、三法人形態に共通する定款作成と設立の基本的な準備について詳しく見ていきます。
