法人設立ガイド 株式会社・合同会社・一般社団法人 全11回シリーズ 第3回 株式会社(1/4) 株式会社設立の基本設計ー発起人・出資・株式のしくみ
【要約】
株式会社を設立する際にまず理解しておきたいのが、発起人の役割と出資、株式のしくみです。本稿では、発起設立と募集設立の違い、発起人になれる者の範囲、出資財産(金銭出資・現物出資)の考え方、株式の内容(普通株式・種類株式、譲渡制限の有無)の設計、そして設立時発行株式数や資本金額の決め方について解説します。あわせて、株式会社という法人形態のメリット・デメリットを整理し、他の法人形態との比較のなかで株式会社を選ぶべき場面についても触れます。設計段階での小さな判断が、その後の事業運営や資金調達のしやすさに影響することもあるため、丁寧に検討することをおすすめします。発起人が複数名にわたる場合には、株式の保有割合をめぐる話し合いも早い段階で行っておくことをおすすめします。
株式会社は、出資者である株主から集めた資金をもとに事業を行い、経営は取締役が担うという「所有と経営の分離」を制度上の特徴とする法人形態です。対外的な信用力が高く、将来的な増資や株式上場も視野に入れやすいことから、事業規模の拡大を目指す起業家に選ばれることが多い形態です。
株式会社の設立方法には、発起人のみが設立時発行株式のすべてを引き受ける「発起設立」と、発起人以外からも株主を募集する「募集設立」の二種類があります。実務上は、手続きが簡便な発起設立が選ばれることが大半です。発起人とは、定款に発起人として署名し、設立に関する事務を行う者をいい、自然人だけでなく法人が発起人となることも可能です。発起人は1名でも設立が可能であり、発起人自身が設立後の株主となります。募集設立は、広く出資を募る分、創立総会の開催など手続きが煩雑になるため、中小規模の会社ではほとんど用いられていません。
出資の方法には、金銭による出資のほか、不動産や動産、有価証券などの財産を出資する「現物出資」があります。現物出資を行う場合には、その財産の価額が定款に相対的記載事項として記載されるとともに、原則として裁判所が選任する検査役の調査が必要とされますが、一定額以下であるなど要件を満たす場合には検査役の調査が省略できる例外もあります。この点は財産評価の適正性が問われる部分であり、専門家への相談が望ましい分野です。個人事業主が法人成りする際に、事業用の車両や機材を現物出資する例もよく見られます。
株式の設計も重要な検討事項です。すべての株式に譲渡制限を付す「非公開会社」とするか、譲渡制限を付さない株式を発行するかによって、機関設計(取締役会の設置義務など)が変わってきます。多くの中小企業では、株式の分散を防ぐために全株式に譲渡制限を付す設計が選ばれています。また、資本金の額は、設立時発行株式の払込金額の総額を基礎として決定しますが、資本金の額そのものが許認可の要件となる業種(建設業や労働者派遣業など)もあるため、事業内容に応じた検討が必要です。
株式会社のメリットとしては、対外的信用力の高さ、株式発行による資金調達の柔軟性、有限責任制による出資者のリスク限定などが挙げられます。一方でデメリットとしては、設立時の定款認証費用や登録免許税が他の形態より高額になりやすいこと、決算公告の義務があること、機関設計によっては取締役会の運営など組織的な手続き負担が生じることなどが挙げられます。将来的に外部からの出資を受けたい事業や、対外的な信用力を重視する事業であれば株式会社が、身内中心で機動的に経営したい事業であれば合同会社が向いているとされることが多く、次回以降ではこの株式会社特有の手続きをさらに詳しく解説してまいります。
また、発起人が複数名にわたる場合には、株式の保有割合(持株比率)が将来の意思決定に大きく影響するため、設立段階で十分に話し合っておくことが望ましいといえます。持株比率によっては、株主総会の特別決議に必要な議決権割合を確保できるかどうかも変わってくるため、経営の安定性を左右する重要な要素となります。
