行政書士が解説する法人設立ガイド 株式会社・合同会社・一般社団法人 全11回シリーズ 第5回 株式会社(3/4) 資本金の払込みと設立時取締役等の選任

【要約】

定款認証が完了すると、次に行うのが出資金(資本金)の払込みと、設立時取締役をはじめとする役員の選任です。本稿では、払込みの実務(発起人名義の口座への振込・払込証明書の作成方法)、設立時取締役・設立時代表取締役・設立時監査役の選任方法、機関設計のパターン(取締役会設置会社か非設置会社か)、そして資本金額を検討する際の税務上・許認可上の留意点について解説します。実務でつまずきやすい払込証明書の作成手順についても具体的に触れます。書類上の小さな不整合が登記申請の遅延につながることもあるため、この段階での確認作業が肝要です。

株式会社の定款認証が完了すると、次の手続きとして出資金の払込みを行います。発起設立の場合、発起人は定款認証後、遅滞なく、それぞれが引き受けた設立時発行株式について、出資に係る金銭の全額を払い込む必要があります。実務上は、まだ会社の口座が存在しないため、発起人の代表者など特定の個人名義の銀行口座に、各発起人が出資金を振り込む形で払込みを行います。振込の際には、単に入金するだけでなく、通帳の写し(表紙、氏名・口座番号のページ、振込内容が記帳されたページ)を保管し、これをもとに「払込みがあったことを証する書面(払込証明書)」を作成して、設立登記の添付書類とします。

払込みと並行して、設立時取締役をはじめとする設立時役員の選任も行います。発起設立の場合、原則として発起人が定款で設立時取締役を定めるか、発起人の議決権の過半数により選任します。取締役会を設置する会社(取締役会設置会社)では、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定する必要があり、また監査役を置く場合には設立時監査役も選任します。取締役会を設置しない会社(取締役会非設置会社)では、取締役が原則として単独で会社を代表することができ、より簡素な機関設計とすることが可能です。中小規模の株式会社では、機動的な意思決定を重視して取締役会を設置しない設計を選ぶ例も多く見られます。選任された設立時取締役等には、就任を承諾したことを証する書面(就任承諾書)を作成してもらう必要があります。

資本金の額については、会社法上は1円からでも株式会社を設立することが可能ですが、実務上は取引先や金融機関からの信用、当面の運転資金の確保といった観点から、事業内容に見合った額を設定することが一般的です。また、資本金の額が1,000万円以上になると、設立初年度から消費税の納税義務が生じる可能性があるなど税務上の影響もあり、建設業や労働者派遣業など一定の資本要件が許認可基準に含まれる業種では、資本金額そのものが事業開始の可否に直結することもあります。これらの検討にあたっては、税務は税理士、許認可要件の確認や申請準備は行政書士といった形で、それぞれの専門家の知見を活用することが望ましいといえます。

払込証明書の作成にあたっては、払込みの日付が定款認証の日以降であること、振込人の氏名が発起人本人と一致していること(親族名義からの振込などは注意が必要です)、そして振込金額が引受株式数に対応した金額であることなど、細かな整合性の確認が求められます。この段階での書類の不備は、後の登記申請の遅延につながりかねません。

払込証明書の作成や設立時役員選任に関する書面(就任承諾書など)の準備は、行政書士が定款作成支援の延長として行うことができる場合がありますが、これらの書類一式を添付して行う設立登記の申請自体は司法書士の専管業務です。次回は、設立登記後に必要となる各種届出について解説します。