行政書士が解説する法人設立ガイド 株式会社・合同会社・一般社団法人 全11回シリーズ 第6回 株式会社(4/4) 設立登記後の届出と手続き

【要約】

株式会社は、法務局への設立登記が完了した時点で法人として成立しますが、それで手続きが終わるわけではありません。本稿では、登記完了後に必要となる税務署・都道府県・市区町村への法人設立届出、年金事務所・労働基準監督署・公共職業安定所への社会保険・労働保険関係の届出、銀行口座の開設、そして許認可が必要な事業の場合の申請手続きについて解説します。行政書士が支援できる範囲と、税理士・社会保険労務士など他の専門家との連携の重要性にもあわせて触れます。各種届出には提出期限が定められているものも多いため、登記完了後は速やかに準備を進めることが望まれます。

株式会社は、法務局に設立登記を申請し、登記が完了した時点で法人として法的に成立します。もっとも、登記が完了しただけで事業をすぐに開始できるわけではなく、その後もいくつかの届出や準備が必要です。設立登記の日をもって法人の成立日となるため、この日以降の取引は法人名義で行うことになります。

まず税務関係の届出として、法人設立後2か月以内(青色申告の承認を受ける場合は別途期限があります)に、納税地を所轄する税務署へ「法人設立届出書」を提出する必要があります。あわせて、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、必要に応じて棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法の届出書なども提出します。都道府県・市区町村に対しても、それぞれ法人設立に関する届出(事業開始等申告書など、名称は自治体により異なります)を行う必要があります。これらの税務関係の届出は、税理士が専門とする分野であり、日々の記帳や決算とあわせて税理士に依頼するケースが一般的です。

従業員を雇用する場合には、年金事務所への健康保険・厚生年金保険の新規適用届、労働基準監督署への労働保険関係成立届、公共職業安定所(ハローワーク)への雇用保険適用事業所設置届などの提出も必要になります。これらの社会保険・労働保険関係の手続きは、社会保険労務士の専門分野です。役員のみの会社であっても、代表取締役が会社から報酬を受ける場合には、原則として社会保険の適用を受けることになる点にも注意が必要です。また、法人名義の銀行口座の開設も、事業を円滑に開始するために早めに着手すべき事項です。金融機関によって審査の観点や必要書類が異なるため、登記事項証明書や印鑑証明書、定款の写しなどをあらかじめ準備しておくとよいでしょう。近年は、事業実態の確認が厳格化している金融機関もあり、事業計画書の提出を求められることもあります。

事業内容によっては、建設業許可、飲食店営業許可、宅地建物取引業免許、古物商許可、産業廃棄物収集運搬業許可など、各種の許認可を取得しなければ事業を開始できない場合があります。こうした許認可の要否の確認、申請書類の作成、行政庁との折衝は、行政書士が業務として行うことができる分野であり、法人設立の段階から許認可取得を見据えて目的条項や役員の欠格事由を確認しておくことが、その後の手続きを円滑に進めるうえで重要です。許認可の種類によっては、経営業務の管理責任者や専任技術者といった人的要件が求められることもあり、設立時の役員構成を検討する段階から見据えておく必要があります。

このように、株式会社の設立は登記の完了がゴールではなく、税務・社会保険・許認可といった複数の分野にまたがる手続きの出発点でもあります。行政書士、税理士、社会保険労務士、司法書士がそれぞれの専門領域で連携することで、設立後の事業運営を円滑にスタートさせることができます。次回からは、合同会社の特徴について解説してまいります。