行政書士が解説する法人設立ガイド 株式会社・合同会社・一般社団法人 全11回シリーズ 第7回 合同会社(1/2) 合同会社の特徴とメリット・デメリット

【要約】

合同会社は、出資者(社員)自身が経営を行う「所有と経営の一致」を特徴とする法人形態で、2006年の会社法施行により導入されました。本稿では、合同会社の基本的な仕組み、株式会社との違い、設立費用の安さや意思決定の柔軟性といったメリット、そして対外的な認知度や資金調達手段の面での留意点といったデメリットを整理し、どのような事業に合同会社が向いているかを解説します。近年増加している合同会社の活用事例にも触れながら、選択の判断材料を提供します。近年は法人形態を問わず柔軟な事業運営を志向する起業家が増えており、合同会社を選ぶ理由も多様化しています。

合同会社は、会社法の施行(平成18年・2006年)に伴って新たに設けられた法人形態で、アメリカのLLC(Limited Liability Company)を参考に制度設計されたといわれています。株式会社が出資者(株主)と経営者(取締役)を制度上分離しているのに対し、合同会社では出資者である「社員」自身が原則として業務執行を行い、「所有と経営が一致」している点が最大の特徴です。なお、合同会社における「社員」とは従業員のことではなく、出資者としての地位を持つ構成員を指す点に注意が必要です。

合同会社の大きなメリットの一つは、設立費用の安さです。合同会社は株式会社と異なり定款認証の手続きが不要であるため、公証人手数料(資本金額に応じて3万円から5万円程度)がかかりません。また、設立登記の際の登録免許税も、株式会社が資本金の額の0.7%(最低15万円)であるのに対し、合同会社は資本金の額の0.7%(最低6万円)と低く抑えられています。電子定款を利用すれば印紙税4万円も不要となるため、株式会社に比べてトータルの設立費用を大きく圧縮できます。設立後の運営コストの面でも、決算公告の義務がないことなどから、ランニングコストを抑えやすい傾向があります。

もう一つのメリットは、意思決定の柔軟性です。合同会社では、利益の配分や意思決定の方法を、出資比率にかかわらず定款で自由に定めることができます。株式会社では出資比率(株式数)に応じて議決権や配当が決まるのが原則ですが、合同会社では、たとえば出資額が少ない社員に多くの利益配分を行うといった設計も可能であり、少人数で事業を始める場合や、貢献度に応じた柔軟な利益配分を望む場合に適しています。また、決算公告の義務がない点も、株式会社との違いとして挙げられます。

一方でデメリットとしては、株式会社に比べて社会的な認知度がまだ十分に高いとはいえない場合があり、取引先によっては信用力の面で不利に働く可能性があることが挙げられます。また、株式を発行して広く資金を調達することができないため、将来的に外部からの大規模な出資や株式上場を目指す事業には不向きです。さらに、社員が複数いる場合、業務執行や意思決定をめぐって意見の対立が生じた際に、株式会社の取締役会のような明確な多数決の仕組みが定款で定められていないと、運営が停滞するおそれもあります。近年は大企業の日本法人が合同会社形態を採用する例も増えており、必ずしも小規模事業者だけの選択肢ではなくなってきていますが、金融機関の融資審査などでは依然として株式会社が有利とされる場面も見られます。

このように合同会社は、設立コストを抑えて機動的に事業を始めたい方や、少人数で柔軟な利益配分を行いたい方に適した法人形態といえます。次回は、合同会社設立の具体的な手続きの流れについて解説します。

実際の運営面でも、合同会社は決算公告義務がないことに加え、役員(業務執行社員)の任期に法律上の定めがないため、株式会社のように定期的な役員変更登記が不要となる点も、運営コストを抑えたい事業者にとってはメリットとなります。